Jean-Paul＆Benoit Droin/ジャン・ポール・エ・ブノワ・ドロワン

ジャン・ポール・エ・ブノワ・ドロワン

■400年の歴史を持つシャブリの老舗ドロワン

ドロワン家の歴史は1620年まで遡る、シャブリの老舗中の老舗ドメーヌ。
およそ400年の歴史の中で少しずつ畑を買い足し、現在ではシャブリの7つのグラン・クリュの内、6つもの畑を所有する稀有なシャブリを代表する生産者の一人となりました。
ドメーヌはシャブリの中心地を流れるスラン川を渡ってすぐのところにあります。ドメーヌの目の前にはまるでドロワンのためにあるかのようにグラン・クリュ・レ・クロの畑が広がり、ドメーヌは左下、真ん中、右上と3つの区画を所有しています。

当主を務めるのは14代目のブノワ・ドロワンです。とても情熱的で、ブルゴーニュのボーヌの醸造学校で5年、ディジョン大学で2年、卒業後はシャブリのドメーヌ・ラロシュとヴァンサン・ドーヴィサでワイン造りを学びました。
1999年に新しい醸造所になってから、父のジャン・ポールと一緒に働き始めます。
父ジャン・ポールの時代には、樽の風味が強い力強いスタイルでしたが、ブノワの代からは樽の使用比率を減らし、ニューマチックプレス機によるソフトな抽出を行い始め、果実味を活かしたピュアなスタイルになりました。

以前はフィルターをかけてすぐ瓶詰めしていましたが、現在は2ヶ月休ませてワインを落ち着かせてから瓶詰めしましす。多くの生産者で行われている酒石を取るために0度以下にするようなワインに刺激を与えるようなことはせず、4～5度で長時間置いてゆっくり取り除きます。

■ラヴノー、ドーヴィサに次ぐ3ツ星生産者

このスタイル変更により、各畑のテロワールが浮かび上がり、1つ1つのクリュの個性が際立つ仕上がりとなり、多くの評論家がこれらの変化を絶賛しました。6つのグラン・クリュを生産するブノワだからこそ、それぞれの特徴をより正確に捉えられることが必要だったのです。
こうして出来上がるドロワンのワインは、明確にテロワールの違いが楽しめるシャブリとして高い評価を得ました。

「たくさんのスタイルを造っているから、ひとつだけを好きになるのではなく色々な畑の違いを楽しんでほしい。」このブノワの言葉に彼の考えが全て詰まっています。

また、フランスを代表するワインガイド「ラ・ルヴュ・デュ・ヴァン・ド・フランス」の特集記事「シャブリの偉大な生産者」において、フランソワ・ラヴノー、ヴァンサン・ドーヴィサと共にジャン・ポール・エ　ブノワ・ドロワンがシャブリの代表的生産者として紹介され3ツ星を獲得。シャブリ・オーセロワ地区で3ツ星を獲得しているのは、フランソワ・ラヴノー、ヴァンサン・ドーヴィサ、そしてドロワン、の3生産者のみです！

記事では、「並外れた表現力　そして素晴らしい均整」と題して、「このドメーヌは、シャブリのトップ集団のひとつである。そのワインは端正で、並外れた表現力を持ち今日、非常に高いレベルにある。スタイルは常に明確で、ワインは綿密で、常にリッチで芳醇である」と絶賛されました。

■シャブリの魅力

シャブリはシャルドネから造られる辛口白ワインの産地であり、コート・ド・ボーヌ程、樽を強くかけないためシャルドネが持つ個性と、土地のミネラルを最も感じられる産地と言われます。

ワインの味わいにおいて最も重要な「ミネラル」をいちばん明確に感じ取れることで、赤ワイン白ワイン含めた中でも、シャブリのシャルドネは「ワインの基本中の基本」といわれます。

赤ワインにももちろんミネラルはありますが、赤い果実の主張がどうしてもミネラルをマスキングしてしまい分かりずらいからです。

またミネラル主体の味わいから、食事と合わせやすいといったこともシャブリの魅力の一つでもあります。

※参照：https://www.jeanpaulbenoit-droin.fr/en/chablis

■シャブリという産地でドロワンが実践していること

シャブリという産地はその知名度の高さと世界的な需要の多さゆえに、多くの生産者が大量生産を行う産地です。すなわち名前だけで売れるから品質が伴なっていなくても大量に売れて利益を稼げる、と言った考えが根底に根付いている地域でもあります。同じブルゴーニュでも品質の追及に懸け、最高のワインを生み出すコート・ドールとは対照的と言えるのではないでしょうか。

そのようなシャブリという産地でドロワンが実践していることは・・・

●収穫量を抑えて葡萄の質を向上させる。（葡萄は収穫量を抑える事により品種の特徴、土地の個性を表すようになる）
シャブリ地方には収穫量を抑える概念そのものがあまり無い。（シャンパーニュ地方と似ている）
●農薬等は必要最低限での使用にとどめる。
●SO2（酸化防止剤）の使用を最低限に抑える。（それにより葡萄本来の柔らかで円みのある味わいになる。）

このようなドロワンのシャブリに対する誠実な熱意から、彼のワインを飲むとシャブリという土地からしか生まれないであろう個性、多くのシャブリからは感じられなくなってしまった魅力を感じます。

■ドロワンの理想とするシャルドネ

シャブリはシャルドネという品種の魅力を最も感じ取れるワインと言われます。
ドロワンが思い描く理想のシャルドネとは。。。

シャルドネは世界で最もポピュラーな品種と言えます。人気の理由はこの品種自体には明確な個性、クセがないからです。
例えて言うなら、松茸ご飯は華やかな香りで食事の主役になりますが、白いご飯が主役になることはありません。なぜなら白いご飯には華やかな香りも分かりやすい味もないからです。しかしその代わりに白いご飯には食事全体をまとめ、支えるという抽象的な美味しさがあります。

ワインに置き換えて言うなら固有の香りや味が明確でないだけに、シャルドネは栽培されている土地の個性を驚くほど明瞭に、そして力強く表現しワインを支えてくれるのです。

シャブリのような冷涼で痩せた土壌ではワインに"果実" 的な要素が最小限にしか感じられません。ハーブティー、レモン、火打ち石のような鉱物の香り、海苔の風味。。。
これはまさにシャルドネがドロワンの理想とする、「シャブリの土地の個性を見事に引き出してくれる品種」であることの証しであるのです。

■右岸、左岸で違うボトルの色

ドロワンの興味深いポイントとしては、同じプルミエ・クリュでも、スラン川を挟んで左岸の畑のものは淡いグリーンのボトル、グラン・クリュがある右岸のものは長熟用の光を通しにくい茶色いボトル使用しています。

これは右岸のグラン・クリュ、プルミエ・クリュは長く寝かせることで真価を発揮するものが多く、飲み頃まで待って飲んでほしい、というドロワンの思いが込められているためです。